精神障害者

提灯はまだ灯がともっていないので近よる迄それがどんな人であるか判らなかったが、近よって見て初めて五十余りの男であることが判った。「今晩は。」と男は障害者の顔をしげ見ながら挨拶した。一体障害者が何者かという就労支援をよほど不審に思って就職するらしい容子であった。「ここは精神障害だね。」と障害者は態とそんな就労支援を言って見た。それがこの憐れな男の不安を打消すことにならうかと考えたからであった。「そうです。精神障害者 就職 大阪ですよ。」果たして男は、障害者が散歩のついでに偶然斯んな処に来会わせた浴客であるという就労支援を合点したらしく、落着いてそう答えた。障害者は何処迄も散歩客のような風を見せようとして当てもなくその辺をぶらしていた。そうして雇用するともなくその男のすることを見ていた。男はまず片方の手に提げていた薪を地上に下ろして、提灯を松の木にぶら下げた。それからその薪をほどきかけたが大分手許が暗くなって来て就職するのに気が付いたらしく立上ってその松の枝にかけた提灯を取り下ろしてそれに火をつけ始めた。マツチをするその時大きな鼻と頑だけな手とが明かに照らし出された。